アズキナシ酒

 アズキナシといっても知らない人がいると思う。
 私も知らなかった。(^^;。

 1995年の秋、那須連峰を北に歩き、坊主沼で一夜を過ごした。
 ありがたいことに、二日目も快晴。
 この日は甲子温泉に下山するだけなので、秋の山と展望を楽しみながらのんびり尾根歩きを楽しんだ。

 この年の那須はブナの実が大豊作で、若木の下にも大量のブナが落ちていた。
 甲子山の登りにかかる少し手前、ブナ林から雑木の林になるあたりで、見慣れない赤い実が大量にみのっているのを見つけた。

 葉っぱはサクラに似ているが幹を見ればサクラとは全然ちがっている。
 ウシコロシでもない。
 ためしに口に入れてみると、酸味と苦みがある。

 これはいい酒になるかもしれないと思ってザックをおろし、この実をひと袋摘んだのだった。
 それがアズキナシだとわかったのは帰宅したのちである。

 できあがった酒の色はこはく色。平均的な果実酒の色である。
 味はガマズミとナナカマドをまぜたような味。
 ちょっと期待しすぎていたので、拍子抜けという感じだ。

 この手の果実酒の場合、ナナカマド味というのがけっこうくせ者のような気がする。
 ウメボシの種の味といってもいいのだが、なかなか個性があって果肉そのものだけの味には結晶してくれない。

 この実を摘んでから甲子山の急登。ここで旭岳や鎌房山、大白森などの大展望に名残を惜しんで下山したのだが、甲子温泉で汗を流して新甲子バス停までの車道歩き。紅葉もみごとだったし、道わきに食べごろのヤマボウシも何本かあって、秋の那須を満喫できたのだった。