福島県知事として、東京電力・国と対峙してきた著者による告発。
著者が揮毫したあまり意味のなさそうな石碑を、あちこちで見た記憶がある。
自治体の長として、県民の安全は至高の任務である。
原発に異変が起きれば、状況によっては、県民の安全が壊滅的な危機に瀕するわけだから、原発の安全性について、他人任せにできるわけがなく、その当然のことを、著者は主張したまでである。
著者の立場は保守であり、かつては自民党所属の参議院議員でもあり、体制側の人だったはずである。
しかし、原発はイデオロギーの問題ではなく、人間の生き死にに関わる問題であり、人の暮らしが成り立つかどうかという問題である。
イデオロギーの問題というなら、生命・暮らしとカネのどちらが大事かというイデオロギーである。
著者は、人間の立場を選ぶ人なのだが、他の政治家・マスコミ・官僚・御用学者たちは、カネや権力・権威を選ぶ人なのである。
人間の立場にたった途端、東電の嘘つき・隠蔽体質や、官僚の無責任や、政治家のいい加減さが見えてきてしまう。
人間と地域にとっての原発とはなんなのか、全体像を知る上でたいへんわかりやすい好著である。