低体温症のメカニズムについて詳しく解説した書。
低体温症は、気象条件によっては夏でも起こりうる致命的な症状である。
日常生活の中でこれが起きることはまずありえず、自然の中で起きる。
また、本人の体調によっては、夏冬問わず起きる。
幸いにして今まで、自分も同行者もこの症状に見舞われたことはないが、症状が出た時点ですでにかなり危険な状態なので、今までのところ、ピンチに陥ったことはないようだ。
しかし、自分の過去の山行を振り返ってみると、いつも安全圏を歩いていたわけではないと思う。
残雪期に吾妻連峰を縦走したことがある。
地吹雪だった日にはほとんど行動しなかったので、小さな無人小屋で難を避けたのだがもし、現在地を失っていたらどうなったか。
翌日以降は天候に恵まれて快調に歩くことができたのだが、もしここで悪天につかまったらどうなったか。
ほとんどトレースのない樹林の中の家形山を目印にいざなわれて通過したのだが、目印がつけられてなかったらどうなったか。
ある程度締まった雪だったので、ワカンなしでもどうにか歩けたのだが、気温がもう少し高ければ、軟雪に足を取られて、行動できなくなったかもしれない。
とくに問題なく行ってくることができたのは、最低限の体力・技術が自分にあったことと、自然条件その他がたまたま、恵まれていたからにすぎないことは、承知しなければならない。
熱中症もそうだが、低体温症も、症状が出る前の予防が特に重要になる。
装備面ではまず、身体を濡らさずに保温できることが最前提となる。
雨・雪から身体を濡らさないと同時に、発汗による濡れにも留意する。
行動中と停止中とでは身体の発熱量が変動するので、そのいずれにも適応できる衣類・装備が必要となる。
身体のメンテナンスでは、水分補給とエネルギー補給を十分に行うことが重要になる。
ピンチになったら、適切な場所・タイミングでビバークを決意し、エネルギーの浪費を避ける。
経験の自分より浅い人と同行する際、とくに悪天時には、同行者の健康状態の観察が非常に重要である。
ふらつき・無関心・甚だしい疲労感などを観察したら、低体温症を疑うべきである。
発症までの時間は、本人の基礎的な体力や悪天の度合いにより変動するが、もっとも悪条件となれば、行動開始後1時間で発症する。
現場での対応は、まずは保温が第一となる。
加温は症状の重篤さに応じて異なる。加温してよいのは、アフタードロップの可能性のない軽症の時のみである。
とりあえず、上くらいの知識を頭に入れておく必要がありそうだ。