快晴の奥秩父
− 金峰・瑞牆3 −

【年月日】

2013年6月8日〜9日
【同行者】 全部で18名
【タイム】

一日目 瑞牆山荘(8:44)−富士見平(9:30-10:23)−瑞牆山(11:45-12:14)
    −富士見平(13:59-14:17)−大日小屋(15:24)
二日目 大日小屋(3:59)−小川山分岐(4:40)−2317ピーク(5:17-5:27)−金峰山(7:10-7:39)
    −標高2155メートル休憩地点(7:33-7:45)−砂洗川(8:08)−
    最終水場(9:06-9:17)−金峰山荘(10:41)

【地形図】 瑞牆山 金峰山 居倉 ルート地図

 金峰山は、奥秩父の西端に位置するが、山容も標高も、奥秩父の盟主と言うべき、立派な山である。

 金峰山のルーツは、奈良県吉野の金峰山(きんぷせん)すなわち、修験道の本山である吉野の金峯山寺である。
 修験道を始めた役行者は、吉野から大峰に至る険しい山の中で、蔵王権現(ざおうごんげん)と出会い、それを信じるようになったという。

 奥秩父の金峰山は、信州(長野県)や甲州(山梨県)の山伏たちが修行のために登拝した、神聖な山だった。
 大日岩は、巨岩を大日如来と見立てたものであろうし、山伏たちにとっては、五丈岩も神体と見なされていたと思われる。
 岩の前に立てられていた赤い鳥居は、その時代の名残だろう。

ミズナラ大木の道(大きな写真)
アズマシャクナゲ1(大きな写真)

 富士見平へは知った道だが、カラマツ林に点在するミズナラの大木がいい感じだった。
 沢筋にクリンソウが咲いているはずだったのだが、なぜか一つも見なかった。

 富士見平小屋に着くと、相変わらずにぎわっていた。
 ここに来る人のほとんどが、瑞牆山か金峰山に登るハイカーだから、山もずいぶん混んでいることだろうと想像された。

 小屋の玄関で、若い従業員の方が、通る人たちににこやかに対応されていた。
 瑞牆山に行く準備をしていたら、その方が、どこで幕営するのか、尋ねてきた。
 大日小屋ですと答えたのだが、この日は大日のテント場での幕営希望者が多かったらしい。
 こういうときには、なるべく早めに手続きをしておいた方がよいことがわかった。

 メインザックをデポしてサブザックを背負い、瑞牆山へ下り気味に行く。
 斜面にミヤマカタバミの花が見られたが、寝坊の花なので、まだ開花していなかった。
 八丁平への分岐からは、比較的はっきりした踏みあとがついていた。

 天鳥川は完全に伏流しており、登山道沿いの小沢にも水は流れていなかった。
 二年前とはずいぶん、様相が異なっていた。

アズマシャクナゲ2(大きな写真)
アズマシャクナゲ3(大きな写真)

 岩が乾いているので、とても歩きやすく、アズマシャクナゲのピンクの花が満開で、すばらしかった。
 急傾斜だが、荷物が軽いので快調に高度を稼ぎ、前方に大ヤスリ岩を見ると、あとひと登りだ。

 瑞牆山の山頂は、いつ来ても大にぎわいだ。
 ここは八ヶ岳の展望台なのだが、残念ながら遠望はきかなかった。
 とはいえ、金峰山や近くの山々はよく見えて、高度感たっぷりの展望を得ることができた。

ツマトリソウ
川上村を望む(大きな写真)

 午後を回って富士見平に戻ると、ミヤマカタバミがようやく、開き始めたところだった。
 幕営手続きをするために富士見小屋に行くと、大日のテント場は満員だといわれたが、こちらのパーティはすでに数に入れてもらってあり、それがわかると手続きをすることができた。
 幕営料がどういうわけか、今回はひとり1000円に値上がりしていた。

 パッキングをし直して、大日小屋への登りにかかる。
 多少急傾斜だが、すぐに平坦になる。
 苔むした針葉樹林だが、乾燥がひどい。

イワカガミ咲く(大きな写真)
苔も乾いている(大きな写真)

 鷹見岩分岐から少しで、大日小屋テント場に着いた。
 テントを張る場所がないかもしれない不安があったが、スペースは十分だった。

 やや曇ってはいたが、雨になる気配は全くなく、かといって、放射冷却で冷え込みそうでもなく、まずまず快適な夜になりそうだった。
 ちょっとした平坦地にツェルトを張って、寝に就いたときには、話し声がやや気になった。

 若い人々が山に戻ってきたのはけっこうだが、中には、マナーや指示系統などが不十分なパーティもいる。
 どこかで、最低限のルールを教えてあげる必要があるのではないか。

テント場から大日岩(大きな写真)
明けゆく北岳・間ノ岳(大きな写真)

 翌朝は、いつものように、2時半に起床し、4時前には出発準備が整った。
 2年前には、最初の急登がとても苦しかったのだが、今回は、スローペースだったため、えらくラクに登っていくことができた。

 大日岩の基部に着くと、背後に、南アルプスと八ヶ岳が見えてきた。
 思った通りの快晴模様で、森林限界を超えたときの絶景が楽しみになった。

 砂払ノ頭までは針葉樹林帯だが、緩やかなので快調に登っていける。
 足元には、バイカオウレンが控えめな花を咲かせていた。

バイカオウレン咲く(大きな写真)
仙丈・甲斐駒(大きな写真)

 砂払ノ頭に着くと、南側から西側にかけての大展望が広がった。
 ここには、大勢のハイカーが憩っていたが、少し前に小休止をとったので、ここは通過。
 ここからは森林限界を超え、目の前に見える五丈岩をめざして、ハイマツと岩稜の中をいく、じつに爽快な登りだ。

富士山(大きな写真)
千代の吹上げ(大きな写真)

 足元に、イワカガミやミネズオウがちらほらと咲き、風もほとんどなく、展望にも少し飽きたころに、五丈岩に着いた。

 同行者たちは、ザックをおろすとすぐに五丈岩にとりついた。
 みんながなぜ、岩に飢えていたのか、よくわからない。
 とにかく自分も、とりあえず岩にとりついてみたが、足を思い切り上げなければならない中段で、それ以上登るのをあきらめた。

ここにもイワカガミ(大きな写真)
金峰山から瑞牆山(大きな写真)

 同行者のうち何人かは、その難所で撤退したが、数名が五丈岩の上に立った。
 みんなが下りきるまで、不安感はあったが、降りてきた同行者たちの身体から、達成感のオーラがほとばしっていたのが印象的だった。

 快晴の五丈岩前で集合写真を撮り、下山にかかる。
 登りに時間がかかったので、前回よりずいぶん遅くなったが、それでもまだ十分余裕があった。

五丈岩(大きな写真)
キバナシャクナゲ(大きな写真)

 金峰山小屋には小さな子どもが二人いて、小屋前の岩にとりついていた子が「頑張ってねー」と言ってくれた。

 同行者には、飽きる下りだったかもしれないが、森林限界下に沈んでいくと、ネズコやチョウセンゴヨウの森になる。

 24年前、友人とここを登ってきたことがある。
 そのとき、金峰山小屋のご主人(故人)が松茸を採っておられた。
 チョウセンゴヨウは、アカマツと生理的に似た性質を持つらしく、アカマツ菌根菌と共生する。
 金峰山の松茸は、このあたりでとれたものに違いない。

チョウセンゴヨウの道(大きな写真)
ミヤマカタバミ(大きな写真)

 キバナノコマノツメやミヤマカタバミの咲く最終水場まで下ると、ずいぶん暑くなり、下界が近づいたことを実感する。
 いつもながら、廻目平までの林道歩きは、ひどく長く感じた。