冬に思いを

 蕗の薹(ふきのとう)はじつは、前年の秋にはすでに、できている。
 大切な蕗の薹は、その後、宝もののように、苞(ほう=薹の葉)で幾重にもくるまれて、長く寒い冬を耐える。
 春が来るのを信じて。

 雪解け水が渓を洗うころ、吹き抜ける風はまだ冷たく感じられるが、春の光はもう、十分に暖かい。
 地上に伸び出た蕗の薹は、釣り人に、春の到来を実感させてくれる。

 蕗の薹の忍耐が報われたことを、彼らといっしょに喜びたい。
 そして、彼らの耐えてきたきびしい冬をも、忘れずにいたい。

秩父の渓にて