6回目の清掃山行は、赤沢谷に出かけた。
ここに初めて来たときは、午後遅く歩き出して夕方にモミ谷出合に着き、伏流帯手前で幕営したのだった。
翌日は夜明けに釣り始めた。
幕営地から少し行ったところにスズタケが密生しており、その前後から釣れはじめて、魚止めと思しき最源流まで行ったのだが、たいへんよい思いをした。
なかでも、とある淵でしばらくやりとりした挙句、糸を切られて釣り落とした大イワナのことは忘れることができず、帰宅しても数日間は、そのイワナのことが頭から離れなかった。
しばしたってから、再び幕営装備を背負ってモミ谷出合に出かけたのはもちろん、その大イワナを手にするためだったのだが、源流部の崩壊のため、渓相が一変しており、くだんの大淵は土砂に埋まって見る影もなく、小イワナさえ釣れずに、力を落として帰途についたのだった。
やや増水気味
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出合から釣ったのは、1998年の春が初めてだった。
出合にかかる橋裏の入渓点に大量のゴミが捨ててあったことを覚えている。
このときはあまり釣れなかったのだが、同行された故・清石さんが、信玄入道の亡霊を目撃されたこともあって、忘れえぬ渓行きだった。
1999年4月は、モミ谷から釣ったのだが、いたるところで落石に見舞われた末に転倒して足首を捻挫し、治療に半年もかかったため、渓のシーズンを棒に振った。
これだけ記憶が鮮明なのは、渓のおかげだ。
心して、清掃遡行に臨んだ。
カツラのある河原
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ところが、数日前の台風で入川は大増水しており、赤沢谷も同様だった。
やさしい渓だから遡行できないこともなさそうだったが、初心者の人もいたので、無理せず、森林軌道のあとを中心に歩くことにした。
赤沢谷出合からの急登で早くも、ウスヒラタケを見つけてしまったので、ゴミを見つけるより倒木に目が行ってしまう。
軌道あともこのあたりはブナやトチを伐り残してあるので、とても風情がよく、きのこも多いところだ。
本流方面への分岐を過ぎ、ヒノキの植林帯を過ぎると、軌道あとの荒れが目立ってくる。
ここはやはり、地盤が緩いのだ。
右岸の大崩壊の上でシカが鳴いて、石を落としてきた。
流れが道に近づくと、やや増水程度のいい流れがすぐ下だ。
ここで斜面を下って沢に下りた。
秋色の渓
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台風の出水でゴミが流れてしまったのか、渓はきれいだった。
しばらく遡行して、白泰沢手前で小休止。
明るい台地は11月と思えないほど暖かい。
その先、モミ谷出合までの間の右岸でも、大きな崩壊ができていた。
モミ谷出合は土砂が堆積して、広い河原になっていた。
ことによると、ここでも崩壊があったのかもしれない。
カツラやシオジが生えているが、ここはこんな河原ではなかったはずだ。
ゴミが少ないので、この日の清掃は、多くの釣り人が竿を仕舞うここまでとした。
シオジの木の下で思い思いに食事をすると、眠くなってき、横になってしばらく寝てしまった。
一段と老いた信玄ブナ
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帰りに右岸のブナ林に立ち寄ってみた。
かつて密生していたスズタケは枯れ尽くして、明るい森となっており、信玄ブナと呼んでいる巨ブナの主幹には、枯損したと思われる無数の傷があって、ここ10年ほどの間にずいぶん、形相が変わってしまったと感じられた。
出始めたムキタケ
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ブナの足元には、ウスキブナノミタケがたくさん出ていたが、今年のブナの実は落ちていなかった。
赤沢の出合からは、団体ハイカーといっしょになってしまったが、きのこを物色しながらのんびり下った。
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