文中わたしが写っている写真は関根さんの撮影です。こちらのサイトの方が写真が多い。
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今年初めての源流行。
というより、今年初めてのまともな渓流行だった。
道理で、通い慣れたはずだった瀑川左岸の道がずいぶん新鮮に感じるはずだ。
今回は、ふだんの沢行き道具一式とは別に、漁協の看板を2枚を背負い、杭を1本手に持っての歩き出し。
それほどの重荷とは思わないのに、なんだか疲れる。
滑落した瞬間のおれ
背中のザックだけが見えている |
ほぼ中間点にある小沢で小休止。
ここまで、キクラゲの出た倒木を見つけたが、採っていく元気なし。
ありがたいのは、梅雨に入ったにもかかわらず天気がよいことだ。
いっぱいに広がったシオジの枝を通して、朝の光が射し込んでくる。
エゾムシクイ、ジュウイチなどの声も聞こえる。
掛橋小屋下に降り立って、やれやれとザックを下ろす。
いつもなら、早く竿を出したくて、小走りに駆け下りるところだが、今日はすべらないように降りるのがやっとだった。
掛橋小屋は完全に倒壊しでぺちゃんこになっている。
多少の思い出もあるが、結局一度も泊まらなかった小屋だ。
小沢先のテン場に2枚目の看板を設置するとザックがずいぶん軽くなったが、ほっとする間もなく、瀑川上流の核心部に入る。
ゴルジュ入口の滝は、右岸からも巻けるがこの日は水線通し行く。
この前来たときには、先行した人からお助け紐を垂らしてもらい、ゴボウ登りで登ったのだった。
気を取り直して壁を登る
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ところで今回は、遡行していくうちに、つるつる岩場での立ち込みに不安を感じた。
靴底のフェルトが岩をしっかりとグリップしているという安心感がなかった。
今回も、お助け紐を投げてもらったので何とかなるかと思って一歩を踏み出したら、すべって淵に落ちた。
紐は離さなかったのでゴボウで登れると思ったが、足がかりがない上、まともにかぶる滝の水流が強くてたいへん難渋した。
紐を離すことも考えたが、そうするとまた一からやり直しなので、がんばって登ることにし、しばらくもがいた。
水を少々飲んだ上、足を滑らせるたびにひざを強打した。
Cさんに引きずりあげてもらい、やっとの思いでリッジに這い登ったが、この格闘でかなり疲れた。
しばらく休ませてもらって遡行再開。
連瀑帯手前の大崩壊によってできたプールを見たのは初めて。
陽のあたるところで少し休んだが、寒さはさほど感じなかったものの、身体がひどく震えた。
この震えのおかげで体が暖まった。
プールの左をへつり進むと連瀑帯。
下段の滝を慎重に登り、上段の滝に登ると、ハーケンが連打され、ロープの下がったへつり。
ここでザックを紐に結んで引き上げてもらい、空身でへつろうとしたとたんに、紐がはずれてザックが淵に落ちてしまった。
これはもう万事休すかと思ったが、Cさんが途中まで降りてザックを回収してくれた。
おかげでどうにか遡行が継続できた。
イチゴ沢入口の滝を巻き降りたところで、また滑落。
尻をしたたか打ったくらいですんだが、またずぶぬれになった。
ここからは、悪場もないので、毛鈎を振りながら遡行。
この沢独特の他産地らしい体色の変なイワナが2つ釣れた。
いつの間にか空は曇ってき、肌寒い陽気となったが、午後を大きく回ったころには予定していたテン場着。
ここで上流から下って来ていた知人パーティは、あとから着いたという鳶八さんをのぞいて沢からまだ戻ってこなかったが、タープを張り、たき火を起こすと、ひと心地ついた。
火の力というのはたいしたもので、手をあぶりながら世間話に花を咲かせているうちに、着ているものはどんどん乾いていく。
琥珀谷から帰ってきた人々と合流して、この夜は合同の宴会となった。
各自が工夫した一品と渓の話・イワナを保護する話を肴に、焚き火を囲んだ渓の夜は更けていった。
源頭のナメ滝を行く
| シロバナノヘビイチゴ
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天気予報がはずれて、夜半から雨。
とはいえ、さほどひどい降りにはならなかった。
両パーティともこの日は峠まで沢を詰めて、下山するのみ。
降ったりやんだりの天気だったが、前日の水没で驚異的に重くなったザックも、ずいぶん軽くなり、快適に高度を上げていく。
コマドリの声が響き、キバナノコマノツメ、イチリンソウ、ニリンソウ、シロバナノヘビイチゴなどが足元を飾る。
いかにもおいしそうなオオワライタケの写真を撮ったのだが、レンズが曇っていたため、ちゃんと写っていなかった。
ナメの連瀑帯を越えると沢はほぼ源頭となり、水流はどんどんやせていく。
満開のアズマシャクナゲのトンネルを抜け、クリンソウ咲く湿地帯まで来ると崩壊した廃屋に、酒瓶が散乱した場所。
これは何の建物だったのだろう。
鴨峠まではヤブもなく、すっきりと稜線に立つことができた。
峠で少々休み、国道までは1時間半。
かこう岩でできた白っぽい沢を横目で見ながら、一気に下った。
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