秩父在来イワナが危ない

秩父在来イワナ

秋まで釣られずに生きててほしいと思ったがどうだったろう

 荒川源流部の一部に生息する、在来種のイワナは今、危機的な状況にあります。

 荒川水系における、ここ数年(雁坂トンネル開通後)の釣り人の増加は、源流部における乱獲に、拍車をかけています。
 無責任な雑誌の釣行記事も、釣り人ラッシュを煽っているかに見えます。

 それに加えて、源流部における、出所不明のイワナ種苗が、密放流されています。
 密放流の決定的な証拠をつかんだわけではありませんが、ここ数年来、荒川水系で約300尾にのぼるイワナの斑紋写真を撮影してきた結果、その事実には、確信を持っています。

 ここ数年で、密放流によって遺伝子汚染をこうむり、取り返しがつかなくなったところが、わたしの把握しているだけで、本支流合わせて3本。
 密放流の魔の手は、健全な川に迫ろうとしています。

 サカナが釣れさえすれば、なにをしてもかまわないという、釣り人の思い上がり。
 その地その地の生態系に対する、絶望的とも言える無神経さ。

 漁業権者の意識も、変わらなくてはいけないと思います。
 権利の対象であるサカナとは、いかなるサカナであるのかということに、もっと思いを致してほしいものです。  地球の自然環境の中で、人間は、いかにして生きていくべきなのか。

 わたしたちに、環境を管理し、コントロールする資格があるのでしょうか。
 それ以前に、そのような能力が果たして、あるのでしょうか。
 わたしは、疑問です。

 だから今は、今ある姿を守らなくてはならないと思うのです。
 これ以上、壊すな。

 在来イワナ保護の途は、まだまだきびしいものがあります。

 保護区の設定を、漁業権者に、認めてもらわなくてはなりません。
 もし認められたら、監視・観察などに全面的に協力しなくてはなりません。
 仕事を持つ身には、かなり苦しいことですが、そうなったら、やらなくてはなりません。

 さらに、保護区の設定が、地元自治体にとって、プラスとなるよう、関係者のネットワークを作らなくてはなりません。
 保護区を作る一方で、釣り人を満足させられるよう、在来種苗の放流区も、作りたい。
 わたしの仲間たちは、在来種の保護を究極的な目的として、在来イワナの飼育・増殖に取り組み、満足できる成果をあげています。
 しかし、それも、とてもたいへんな作業です。

 気のおけない仲間たちと、美しい渓で、心おきなく、のんびりと竿を振る日が来ることを願いながら、今年の「秩父渓だより」を、スタートしたいと思います。