秩父イワナの謎

 まずは、問題意識から述べることとしたい。
 はっきり言って、秩父のイワナは美しいのだ。

 秩父イワナの生息域である埼玉県荒川源流は、ニッコウイワナの生息域とされているが、峠ひとつ越せば、ヤマトイワナ生息域となる。
 微妙な位置なのだ。

 秩父イワナの特徴は、腹から腹ビレ、尻ビレにかけてのオレンジ色、オレンジ斑点が非常に濃いことである。
 これはニッコウ系の中でも、陸封された歴史の古いことを意味しているのではないかと、いう気がする。

 白点のはっきりした個体を見ると、秩父イワナはニッコウイワナなのだということが、はっきりわかる。

 ところが、なかには、白点のほとんどわからない個体もいるから、話は単純でなくなる。

 江戸湾に注ぐ荒川と、太平洋に注ぐ富士川。海へ出てからの交流が不可能だったとも思えない。

 それより、分水嶺の雁峠、將監峠、雁坂峠などは、戦国時代に信玄の手のものが日常に行き来した峠。
 江戸時代から明治にかけては、盗伐人や木地師、猟師、炭焼きをはじめとする山棲みの人びとが、さかんに行き来し、住みついた山域でもある。

 私は、秩父イワナの形成期は、氷河期にあらず、江戸時代だと考えている。
 結論が出るとも思われない、永遠のロマンである。