きのこ栽培日記(6)−本伏せ

 2月末に種コマを打ち終えた原木は、寒冷紗をかけた状態で、ずっと庭の隅に置いてあった。

 この間、雨の日以外は、毎日2回ずつの散水を欠かさなかった。
 水分を十分に補給し、雑菌の付着しにくい環境においてやることで、打ち込んだきのこ菌を活着させるのだ。

 いよいよ5月の連休に入った。
 今日は5月2日。天気予報では、4日から5日にかけて雨になるようだ。
 ということは、今日明日のうちに、きのこ作業と農作業を終えなければならない。

 原木は、本伏せの段階になった。
 本伏せとは、菌糸を原木の中に蔓延させ(ほだ木作り)、時期が来ればきのこ(子実体)を発生させられるような場所(ほだ場)に移動することである。

 ほだ場は、直射日光は当たらないが、木の葉越しの散光線がよく入り、風通しはよいが、湿度も十分、かつ近くに腐敗したものなどがなく、こぎれいな場所がよい。
 そんなことを言っても、理想的な場所が、そうそうあるわけではない。
 とりあえずは、直射日光の当たらない場所を探すしかないだろう。
 私の場合、家からは少し距離があるが、親戚所有のスギ林の中を、以前から借りてある。

 まずは、ひさしく養生させてあった原木を車に積み込み、数キロ離れたほだ場に運んだ。
 釣り場に向かう国道は、レジャー客の車がひっきりなしに行き交っている。
 ほだ場の近くでは、中高年ハイカーが黙々と歩いていた。

 車の入るところからほだ場までは、一輪車を使って木を運ぶ。
 足元が平坦でないので、バランスに気を使っても、何度か転倒した。
 車とほだ場を数往復して原木を搬入し、伏せにかかる。

 数年前に伏せたほだ木が残っているので、まずは前作の片づけ。
 トウ鍬で、朽ちたほだ木を掘り起こす。
 伏せこんだときには原木の姿をしていたのだが、今はほぼ完全に分解され、ぐずぐずの空洞と化している。
 ナメコの植わっていたヤマザクラは、芯だけが分解されずに残っていた。
 ヤマザクラよりコナラの方が分解されやすいようだ。

 シイタケは鳥居伏せ、ナメコ・ヒラタケ・エノキタケは直接地面に伏せこむ(接地伏せ)。
 接地伏せの場合、木と木の間は5センチくらいあけておく。
 そうでないときのこが発生したときに、押し合いへし合いになってしまう。

 並べ終わると、寒冷紗を掛け、四隅に石、上にスギの枝をのせておく。
 このあたりには野ザルが多く、ときどきほだ木の皮をはいで、甘皮を食べるやつがいるからだ。
 また、こうしておくと、秋にほだ場の草むしりをする際、寒冷紗をはいだときにいっしょに草も抜けてしまう。
 これで、草むしりの手間がずいぶん省けるのだ。

 これで本伏せは終わり。
 こんどは、ぐずぐずに朽ちた腐木を車に積み込む。
 これだけ崩れれば、畑の肥やしになるだろう。

 職場の近くにある小作畑に回り、腐木をトウ鍬で粉砕して、サツマイモ予定地のうねの中にばらまいた。
 途中、新緑まぶしい雑木林で拾ってきたシバ(落ち葉)を、植えたばかりのネギ苗の足元にかけてやる。
 これでいくらか、乾燥防止になるはずだ。

 ジャガイモは遅霜で、霜げてしまったが、トウモロコシは何とか持ちこたえたようだ。
 うまくいくか、いかないか。
 やってみないと、わからない。

 へとへとになって家に戻ると、腹を空かせたニワトリがコケコッコと叫ぶ。
 早くビールが飲みたい。