ヒメベニテングタケ恋歌

 どのきのこが一番好きかと言われれば、やっぱりおいしいきのこです、と答えてしまいそうです。

 でも、森の中で出会ったときに、心のときめきを感じるのは、ヒメベニテングタケです。
 「また、逢えてよかった」という思い。

 ほのかに赤みを帯びたつぼ。
 あったかそうなレモン色のセーターを着たような柄。
 赤いカサの上に、濃い赤のつぼの小さな破片が、たくさんのっかっています。
 小さいけれど、とても可愛らしいきのこなのです。

 夏から秋にかけてのブナ林、雑木林で、よく見ます。

 このきのこが一番きれいなのは、カサを広げきったときでしょう。
 つぼの破片が、梢(こずえ)から射し込む淡い光を受けて、きらきら輝いています。

 このきのこの写真を、何枚も撮りました。
 でも、まともに写っていたためしがありません。

 そういえば、いろいろなきのこ図鑑を見ても、ヒメベニテングタケの美しい写真が載っているのを、見たことがありません。
 そのなかで、山渓の『日本のきのこ』のヒメベニテングタケは、出色の作品だと思いますが、それでも、このきのこの本当の美しさの半分も表現し得ていないと思えます。

 おそらく、私の思い入れが強すぎるのでしょうね。

 今年も、きのこのハイシーズンが終わりました。
 来年また、ヒメベニテングタケに逢うのがとても楽しみです。