圧制を変じて自由の世界を

秩父事件を学ぶための参考文献

このページでは、とりあえず、いくつかずつの参考文献をリストアップします。
今まで目を通した文献すべてのリストアップには、今しばらくご猶予を願います。

概説書

  • 江袋文男『秩父騒動』(大和学芸図書 1982)
     1950年に刊行された秩父事件の概説書の復刻版。秩父事件の経過について、当時としてはたいへん詳しく叙述している。

  • 井上幸治『秩父事件』(中公新書 1968)
     秩父事件の経済的背景・政治的背景を簡潔に分析し、「自由民権運動の最後にして最高の形態」と位置づけている。
     秩父事件の経過や事件後についても、たいへん簡潔かつ要点を押さえてまとめられており、秩父事件入門には、もっとも適切な書である。

  • 中澤市朗『自由民権の民衆像』(新日本新書 1974)
     秩父事件の政治的・経済的背景や事件の経過、事件後の顕彰運動を、日本における民主主義発達の観点からあとづけた書である。

  • 浅見好夫『幻の革命』(埼玉新聞社)
     秩父事件の経過を、詳細にあとづけている。

  • 浅見好夫『秩父事件史』(新人物往来社)
     前著の完全版。秩父事件の全経過を、史料に基づき、たいへん詳細にあとづけている。

史料集

  • 吉本富男・大村進編『秩父事件史料』全6巻(埼玉新聞社)
     秩父事件に関する史料を数多く収録している。

  • 井上幸治・色川大吉・山田昭次編『秩父事件史料集成』全6巻(二玄社)
     秩父事件に関する史料を網羅した画期的な史料集である。

  • 井出孫六編著『自由自治元年』(現代史出版会 昭和51)
     秩父事件に関する史料は少ないが、重要な歴史的な研究論文を収録している。

写真集

  • 清水武甲『秩父悲歌』(春秋社)
     「秩父暴徒」と呼ばれた地元の秩父事件を、叙情的に描いた詩的写真集。

  • 品川栄嗣・井上光三郎『写真で見る秩父事件』(新人物往来社)
     秩父事件にまつわるさまざまな史跡や資料を集めた、写真で見る資料集である。

調査・研究書

  • 中澤市朗『秩父事件探索』(新日本出版社 1984)
     加藤織平、犬木寿作、柴岡熊吉、大野喜十郎、大野又吉、菊池貫平ら秩父事件参加者や、秩父事件にまつわる人々についての、歴史エッセイである。

  • 中澤市朗『歴史紀行 秩父事件』(新日本出版社 1991)
     秩父事件と軍隊、秩父事件と地方自治、秩父事件と徴兵問題などについての研究論文と秩父事件をめぐる歴史紀行である。

  • 新井佐次郎『秩父事件−震源地からの証言』(新人物往来社 昭和54)
     農民歌舞伎と秩父事件、飯田村と秩父事件、金屋戦争、高岸駅蔵、秩父事件に参加した学校教員などについての好論文集である。

  • 新井佐次郎『秩父困民党会計長 井上伝蔵』(新人物往来社 昭和56)
     会計長井上伝蔵の生い立ちから死去までを詳細にあとづけた研究書である。

  • 稲田雅洋『日本近代社会成立期の民衆運動』(筑摩書房 1990)
     秩父事件は民権運動の系譜にたつものではなく、はるかに近世の百姓一揆に近いものだと論じている。

  • 中澤市朗編『秩父困民党に生きた人びと』(現代史出版会 1977)
     幕末維新期の秩父、上州側の秩父事件、犬木寿作、柴岡熊吉、高野作太郎、井上伝蔵についての歴史叙述や調査、聞き書きなどを集めている。

  • 小池喜孝『鎖塚』(現代史出版会 1973)
     秩父事件参加者のうち、北海道の監獄で囚人労働に従事させられた人々を掘り起こすと共に、囚人労働の歴史を明らかにしている。

  • 小池喜孝『伝蔵と森蔵』(現代史出版会 1976)
     秩父困民党乙大隊長飯塚森蔵が、北海道のアイヌコタンに潜伏して一生を終えたとする仮説を提示している。また、秩父事件をはじめとする地域民衆史の掘り起こしを通じて、何が変わるかを理論的に示している。

  • 小池喜孝『秩父颪』(現代史出版会 1974)
     秩父困民党会計長の井上伝蔵が、潜伏先の北海道でどのように生きていたかを掘り起こすと共に、関東一斉蜂起説についても考証している。

  • 高野壽夫『秩父事件−子孫からの報告』(木馬書館 1981)
     秩父事件参加者の子孫を訪ね歩いた記録と、子孫の目から見た秩父事件を描いている。

  • 井出孫六・森山軍治郎・色川大吉『暴徒 現代と秩父事件』(同大労学アッセンブリ・アワー委員会 1976)
     秩父事件研究者である三氏による、肩の凝らない講演記録。

  • 小泉忠孝『鎮魂 秩父事件』(まつやま書房 1984)
     秩父困民党田代栄助の孫である著者から見た秩父事件と、埼玉師範学校などに保管されていたという説のある田代栄助の遺骨についての考証がある。

  • 古林安雄『秩父事件 吉田町石間を中心として』(私家版 1981)
     石間村の体験した秩父事件を社会経済的に分析している。

  • 森山軍治郎『民衆蜂起と祭り』(筑摩書房 1981)
     江戸末期以来の秩父地方の民衆文化についての詳しい調査・分析がある。秩父事件については、百姓一揆だと位置づけている。

  • 春田国男『裁かれる日々』(日本評論社 1985)
     秩父事件当時の裁判が、いかなるものだったか、また、秩父事件の裁判がいかになされ、参加者の処刑がどのようなものだったかを明らかにした。

  • 五十嵐睦子・石原芳枝・大沼田鶴子・高畑静子・春田睦子『女たちの秩父事件』(新人物往来社 1984)
     秩父事件参加者の妻や家族が、秩父事件とその後をどう生きたかを掘り起こしてある。

  • 千島壽『困民党蜂起』(田畑書店)
     詳細な周辺史料を駆使して、地元住民の目から秩父事件を分析し、秩父事件を秩父農民戦争と規定している。

  • 井上幸治『近代史像の模索』(柏書房 1976)
     フランス革命と秩父事件を比較しつつ、世界史的視野で秩父事件を考察した論文集である。

  • 井出孫六『峠の廃道』(二月社 1975)
     秩父事件に関するいくつかの考察がまとめられている。峠道が失われることによって、近代が失ったものは何かということについての考察は、まことに胸に落ちるものがある。

  • 清水吉二『群馬自由民権運動の研究』(あさを社 1984)
     秩父事件は、群馬県の自由民権運動と不可分のものとしてとらえる必要がある。政治・経済の両面から群馬の民権運動に迫り、秩父事件にも言及している。

  • 色川大吉『困民党と自由党』(揺籃社 1984)
     秩父困民党とは対照的に、自由党と困民党が敵対・雁行した武相困民党を簡潔に分析した書である。秩父困民党にもふれている。

  • 中沢市朗『埼玉民衆の歴史』(新埼玉社 1974)
     幕末から明治末にかけての、民衆の側から見た埼玉百年史。埼玉の自由民権運動と秩父事件についてもふれている。

  • 松本健一『秩父コミューン伝説』(河出書房新社 1986)
     秩父事件研究史と秩父事件を通して、明治の情念とでもいうものに迫ろうとしている。

  • 色川大吉『明治の文化』(岩波書店 1970)
     秩父事件を「通俗道徳」論で解こうとする試みであり、底辺における思想の闘いについてもふれた論文「民衆意識の峰と谷」が収録されている。

小説・エッセイ集

  • 春田国男『寅市走る』全2巻(有朋社 1983)
     秩父困民党発起人の一人であり、武装蜂起の際にも幹部として戦闘の最前線に立ち、事件後拷問に負けずに帰郷して、秩父事件の顕彰に一生を送った落合寅市を描いている。

  • 金子直一『土蔵』(私家版 1985)
     皆野町在住の著者による短編集。表題作は、下吉田村関の知人宅土蔵に潜伏していたころの井上伝蔵を描いた作品である。

  • 西野辰吉『秩父困民党』(講談社文庫 1972)
     1954〜1956年にかけて『新日本文学』に連載された作品である。秩父事件の全体像やディテールがいまだ明らかになっていなかった当時に書かれたという歴史的制約はあるが、秩父事件への関心を高める上では大きな役割を果たした。

  • 井出孫六『秩父困民党群像』(角川文庫 1976)
     秩父事件の指導者や参加者の姿を生き生きと描いた短編集である。

  • 新井佐次郎『秩父事件小説集』(まつやま書房 1981)
     秩父在住(故人)の著者による、参加者への共感あふれる短編集である。

  • 新井佐次郎『秩父事件の妻たち』(東京書籍 1984)
     秩父事件参加者の妻たちを描いた短編集である。

史跡ガイド

  • 秩父事件研究顕彰協議会『秩父事件ガイドブック』(新日本出版社 1992)
     写真も多い上、コンパクトにまとめられており、史跡めぐりの手引き書としては、もっとも適している。

  • 戸井昌造『秩父事件を歩く』全3巻(新人物往来社 1978〜1982)
     秩父事件の舞台となった村々を探訪し、古老による口伝などを筆記した画文集。

  • 井出孫六『秩父困民党紀行』(平凡社カラー新書 1978)
     秩父事件の舞台となった村々を美しい写真と共に紹介した紀行集である。