西洋の歴史家・哲学者たちが歴史について述べてきたことが随所に紹介されていて、難解ではあるが、学ぶところが多い。
現在の問題意識が、地理的環境が歴史にどのような影響を与えるかということなので、「歴史理論としての地理的環境論」は興味深かった。
地理的要素が歴史を決定づけるという議論は極端すぎるというのが著者の考えである。
それはそのとおりである。
細分化されたテーマのさらに細部について論じる最近の歴史学に、ほとんどの人は興味を持つことができないのではないか。
問題となっているその細部を解明し、論証することで、いったい何が明らかになるのか。
それが、その細部に関心を持っているオタクたちの、趣味の議論と、どう異なるのか。
すべての学は、世界を認識するという大目標に向かって、論を立てているはずである。
世界認識という大目標を、問題意識を述べる冒頭部分で記述するかどうかは別として。
この史学概論は、歴史によって何を認識できるのか、歴史認識が世界認識とどのような関係にあるのか、という問題と、正面から向き合おうとしている。
歴史学がなんの役に立つのかという議論は、あまり生産的でない。
学問の面目は、役に立つとか立たないでなく、それが世界認識の一助となりえるかどうかにあると思う。