グラムシの思想に関する書誌学的な研究書。
もっとも書誌だけでなく、グラムシ理論とは何だったのかについて、論じている。
イデオロギーまたは民衆意識は、上部構造の一部をなしているが、それらをめぐる闘いの意味について理論づけたのがグラムシだと理解している。
彼の理論における中心的な概念である「ヘゲモニー」は、イデオロギーよりさらに広い概念で、民衆レベルの意識形成に寄与する思想的・理論的な闘争や宣伝をも含むと思われる。
知的・道徳的ヘゲモニーと称される分野では、論争相手を理論的に圧倒することだけが目的なのではない。
論争する相手と論点がまったく異なっているのに、議論というより、ひたすら自説を開陳しても、論争したことにはならない。
相手の論拠が論理的に組み立てられているとすれば、それを正確に理解し、論点に沿って議論することが必要だし、相手の論理が論理的でないなら、まずはその点をただしてまともな議論に持っていく必要がある。
そうでなければ議論は、、単に「言ってやった」という意味しか持たない。
何ごとかを説こうとする相手が自説を理解してくれないと感じたとき、賛否はともかく、まずはなぜ相手が理解してくれないのかを分析する必要がある。
自説が間違っていたり、考察が不十分だったりする可能性があるからだ。
クールな理論と論争相手や一般民衆に対するリスペクトによってヘゲモニー闘争は闘われるということなのだと思う。