マルクス・エンゲルスの理論が現在、いかに有効かを論じている。
ソ連・東欧の崩壊以降、マルクス主義が破綻したという言説に対し、いかに反撃するかという問題意識を強く感じさせる本。
マルクス・エンゲルスの著作のあれこれから、片言隻句を取り出して彼らを預言者に仕立て上げるのでなく、マルクス主義という思想体系が本人たちによってどのように語られ、それがどのような現代的意味を持つのかが書かれている。
マルクス・エンゲルスは自分たちの理論を実現させることはできなかったので、その試みはレーニン以降に引き継がれた。
本書の最も興味深いのは、社会主義建設にむけたレーニンの試行錯誤にかんする部分だった。
11月革命直後のロシアは、絶望的な困難を抱えていた。
期待していたヨーロッパ革命の不発。
まだ続いていた対独戦争に加えて、列強による干渉戦争。
連立していた各党の意見対立。等々。
戦時共産主義の大失敗からネップによる立て直しのさなかにレーニンは死んだ。
その後のソ連は、反人間的な恐怖国家へと変わっていった。
戦時共産主義の何が間違っていたのか、ネップの意義は何で、どのような課題にどこまで迫れて、どのような課題を残したのか、総括はされなかった。
著者は、それを試みようとされているが、それはずっと早くに(1920年代のうちに)果たされるべきだった。
ソ連は、レーニンが思っていたのとはまったく別の国家となり、世紀末に至って破綻した。
それでもなおマルクス主義は有効だと主張するのに、著者が持ち出された中国・ベトナム・キューバの例は、説得力がない。
まず、事実関係やデータがない。
実情が比較的伝わってくる中国は、格差と独裁の国としか、いいようがない。
日本の社会主義革命に向けた展望についていえば、著者ご自身が所属されている(と思うんだが)日本共産党は、スターリンが突き進んだ独裁政党の後継ぎとして、日本国民から見放されつつある。
著者が行なっておられるような理論的探究は、独裁政党にはなじまない。
独裁的なトップがマルクスを独裁的に解釈し、それを党員たちに叩き込むのが、スターリンと日本共産党のやり方である。
本書のような視野の広い研究が。とても貴重だと感じる。