戦前的なものの根拠となった各種神話がどのように作られ来たったかが、書かれている。
戦前的な言説の多くは、記紀神話などに源流を持つ。
記紀神話が妄想や捏造の産物か、それともどれほどか事実を反映したものかについて議論するのは、本書の主題でない。
キーワードは、「神武天皇」「天照大神」「神功皇后」「八紘一宇」などである。
これらは、近代日本による対外侵略を正当化するワードだったのだが、古代以来一貫してそのような文脈で語られてきたものとは限らなかった。
これらのワードは、江戸時代の水戸学および国学の中で「再発見」され、近代以降さらにデフォルメされて、国民を妄想に駆り立てるイデオロギーへと転形された。
本書はその過程をたどっている。
著者が強調するのは、臣民は古来、天皇に忠だったのであり、今なお臣民は天皇に忠である。
天皇は先祖に対し孝であり、臣民もやはり父祖に対し孝である。
このような「忠孝の四角形」ともいうべき観念は、戦前日本において、国家と国民の双方が呼応する形で作り上げられてきたのであり、それが戦前的なものの正体であると著者は述べられている。
わかりやすい説明である。
自分も含め一般国民の身の回りに、戦前的な言説の痕跡は数多い。
それらの意味をひとつひとつ解いていく必要を感じる。