御成敗式目とはいかなる法で、制定以来どのような扱われ方をしてきたのかを解説した本。
土地の所有権(領有権)移動について、御成敗式目はどのように述べているか。
自分に有利な境界線を持ち出して領地を広げようとすることは、禁じられている。(第36条)
評定を公平たらしめようという意図がうかがえる。
領内の農民が逃亡したからと言って、その妻子をつかまえ家財を奪うことは禁じられている。(第42条)
記録はほとんどないのだが、逃散は日常茶飯事だったようである。
逃散したとしても、受け入れ先には困らなかったりのだろう。
この条文は、ある百姓が逃散したのち、家族はもとのまま暮らしている場合を想定している。
領主にすれば、百姓の逃散は腹ただしいことだったと思われるが、残った家族に対する感情的な処罰や報復は、認められない。
裁判中の他人の所領を望むことは禁じられている。(第43条)
これはもっともなことである。
実際に知行していない土地を他人へ寄進する行為や、知行していても、本所(名目上の土地所有者)に無断で土地を寄進する行為は、認められない。(第47条)
土地に関する権利が錯綜することを防止しようとする条文にも見えるが、荘園領主や荘官に配慮して荘園秩序の破壊を戒めている。
一般的に貸借関係について、どのような規定があるかと思って読んだのだが、その点に関する規定はなかった。
とはいえ、面白い本だった。