松尾修『高遠旅石工たちの幕末』

 高遠旅石工を主人公にした小説。

 山里を歩いていると、至るところで石仏に出会う。
 3Dプリンタで削り出したかと思われるような特徴のない作品も多いが、特定の誰かをモデルにしたのではないかと思われるリアルな作品に出会うこともある。

 高遠石工と銘の入った作品を見たのは、奥多摩の御岳山だったと思う。
 旅の石工がいたのだということを、その時に感じたのだった。

 信州に石仏は多いのだが、優れた作品が多いと感じていた。
 こんな会話がかわされていたのではないかと妄想することもある。

 主人公の伊藤嘉助をめぐる人物が人格者揃いなのは、設定として、やや甘いかなという感じもするが、石から心を彫り出す人の心ばえとしては、腑に落ちるところでもある。
 龍岡五稜郭と高遠石工との関連については、著者の想像だというが、事実である可能性はあると思う。

(ISBN978-4-907514-60-0 C0093 \1700E 2015,9 講談社エディトリアル 2023,10,15 読了)

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