食事は基本的に、一汁一菜すなわち、ご飯と味噌汁と漬物でよいと主張している。
著者は料理研究家だが、いわゆる栄養学的な論でないし、かといって単なる印象論でもないが、非常に納得感のある提案である。
生きることは食べることであるのだが、「昨日何を食べたか」といわれると、やや困る。
聞かれているのは食べた料理の名称なのだろうが、自分の場合、それだと答えようがない。
答えるとすれば、「煮物」とか「炒めもの」と言うしかないから。
料理の名称とは要するに、料理店のお品書きに書いてある名前のことだと思う。
それだと、里芋とこんにゃくと人参を出汁と醤油と味醂で煮込んだものは、なんと呼べばいいのか。
自分は、料理屋の料理のようなものばかり食べてるわけでなく、日々を生きるために、あるものは自給して、ないものは購入し、火を使って食べられるようにプロセッシングして食べているだけである。
特段、美味しくないとか、貧相な食べ物だという自覚はない。
料理に関するサイトや本は、けっこう見る方だと思う。
なかなか参考になる。
しかしそれは、あるものをどうやってプロセスするかの参考にするのであって、食べたい料理を見つけるためでない。
だから明示されている材料や調味料も、たいがい、あるもので間に合わせる。
テレビのある家で料理番組を見たことがあるが、知的レベルがどうなのかと危惧される芸能人が、一口食って奇声をあげ、「これは絶品だ」などと叫んでいた。
奇声をあげたくなるほど美味い食べ物がないとはいわないが、映像で見る限り、それほどでもなさげだし、そもそも「あんまり美味しくないね」などとは、口が裂けても言えないのだから、何を食っても絶品なのだ。
この本を読んで、自分の食生活がさほど間違っているわけでないと感じさせてくれたのが、ありがたかった。
散見される「日本人は」という超歴史的な論にはチト困惑した。