木下ちがや他『日本共産党100年』

 経済学・政治学・かつての党員などによる日本共産党分析。
 ためにする攻撃書でなく、基本的には共産党が変わることによって、日本社会をよい方向に変えていく方法を模索する立場で書かれている。

 日本共産党100年の歴史といっても、100年間まるまる活動できていたわけではない。

 戦前(コミンテルンの支部だった時代)には、天皇制国家による弾圧により、完全に活動停止に追い込まれた。

 占領初期には、共産党への期待がそれなりにあったにも関わらず、理論面・運動面で社会に発信することは、難しかった。
 占領期後半には、弾圧と謀略に踊らされ、ソ連による的はずれな方針に右往左往して、国民の反感を買った。
 この時代に、指導部の一部によって採用された武装闘争路線は、共産党への恐怖感を国民に植えつけた。

 この党を再建したのが、宮本顕治らだったことは、中北浩爾『日本共産党』や本書の木下論文により明らかにされている。
 彼らによって、ソ連・中国とも、西ヨーロッパとも異なる、強固な共産党が建設された。
 共産党員は、マルクスやレーニンの理論に殉じて社会主義革命に命をかける革命家ではなく、日々の暮らしの悩みを親身になって聞いてくれ、隣人たちと同じ目線で問題に取り組んでくれた。

 宮本らが確立したこの路線により共産党は、国民の信頼を徐々に取り戻し、国会で一定の議席を確保するようになった。
 共産党の国会議員たちの多くはじつに優秀で、論理的で、非妥協的で、不祥事とも無縁で(もちろん皆無だったわけではない)、信頼・尊敬に値する人物が多かった。

 そういう中で、日本共産党に対し、さらなる党内民主主義を求める声が、党の内外から出されている。
 2022年は、党内におけるパワハラ案件が、地方でも中央でも噴出した。
 100年を機に、共産党は変わることができるのだろうか。

(ISBN978-4-7803-1250-8 C0031 \1800E 2022,11 かもがわ出版 2022,12,31 読了)

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