陰謀論の周辺を解説している。
一見すると荒唐無稽な言説も、断片的な情報をつなぎ合わせることによって、もっともらしい陰謀へと描き出すことができる。
これなどもそのような陰謀論で、私もそれにのせられていた可能性が高い。
これなどもその可能性が高い。
陰謀論の特徴として、断片的な論拠が存在するという点があげられる。
まったく根拠のないSF物語は、だれもがそのようなもの、すなわち単なるエンターテイメントとして受け取る。
しかし、一見無関係に見える事実やデータどうしを陰謀というフィクションによってつなぎ合わせることにより、リアルとは別の世界を創造することができ、一部の人をして別世界とリアルとを区別できなくさせることができるのである。
陰謀論の系譜については本書に詳しい。
宇宙人支配説などのごくコアな陰謀論を信じる人は、さほど多くないだろう。
しかし、「〇〇を食べれば〇〇が治る」などの言説は、ワイドショーでしばしば語られているらしく、それを信用したところで実害もさほどないだろうから、一種のブームになることさえしばしば起きる。
反科学論は、科学万能論の裏返しである。
科学に限界があり、人はそれを自覚しつつ科学を利用すべきなのである。
歴史の分野では、近代に対する向き合い方に、反科学論のアナロジーが見られる。
1960年代には、科学万能論の傾向が支配的だった。
当時、原子力の可能性を否定する論調はほとんどなかった。
この時期、近代化を無条件に美化する議論が支配的だった。
発展史観の一種であるマルクス主義歴史観も、近代化批判は強くなかった。
物質文明の醜悪さが露見した20世紀末以来、近代に対する疑念が生じ、民衆の反近代的な傾向を評価するような言説が浮上した。
反近代論は結果的に、近代がもたらした「自由」や「人権」といった普遍的価値を軽視することになる。
陰謀論から自由であるために、強靭な理性が必要だというわけではない。
科学は一つの体系であるということが理解されていれば(そのことは義務教育段階の学習内容に含まれている)、ネット上に転がっている「極秘情報」などあるはずがなく、それらをつなぎ合わせた言説に疑念を持つことができるはずである。
以上はもちろん、自分への反省を含めた読書感である。