『続・下流老人』より約1年前に出された正編。
続編で無残な現実を思い知らされたあとにこちらを読むと、自分の将来が「何かあればアウト」というより、「かなりの高確率でアウト」なんだろうと思わされる。
人生にはいくつもの落とし穴があるものだが、いくつもの穴に次々と落ちたのであればともかく、ひとつふたつ失敗したからといって立ち上がる意志と多少の努力があれば、蟻地獄の底に落ちるようなことはないものだと思っていた。
セーフティネットを維持するために、われわれは税を納めてきているのだから。
ところが、この「国」のセーフティネットはかなり貧弱であるだけてなく、加速度的に崩壊しつつある。
ほとんどの人が蟻地獄の縁を歩いているのに、まだ落ちていない人が落ちた人を蔑視し、落ちた人は助けを求めることさえできない。
著者が言われるように、制度を立て直さなければ、傷が大きくなるだけである。
貧しくとも楽しく暮らす処世術だけではどうにもならないのだが、それもまた必要かなと思う。