本田宗一郎氏の自伝と伝記と語録がコンパクトにまとめられている。
この本には、大企業が失ってしまった創業者の精神が詰まっている。
一人の本田の陰には、無数の敗北者がいたはずだが、健全な資本主義とは、そのようなものである。
成功するには、知識・技術・人間関係・本人の人間性・運などが必要なのだろう。
ゼロ戦や大和を例に出して、戦争はモノづくりを進歩させるという説があるが、それはおそらく間違っている。
井深大や本田が、太平洋戦争に対し否定的なのは、戦時経済が、自由なモノづくりを抑圧することを肌で知っているからだろう。
ソニーもそうだがホンダも、自由な時代が生み出した、戦後を象徴的する企業だといえる。
自動車もバイクも耕うん機も、民生用として普及し、平時における庶民生活の必需品である。
イノベーションの原動力は、知的冒険だろう。
本田氏を動かしてきたのが役に立つモノづくりへの衝動だったことが、氏の自伝部分にはあふれている。
これも若い人々に読んでほしい本である。