著者は、死ぬ直前まで過労状態で働かねばならない時代が到来したと述べている。
この本は、この国がそうなってしまった原因は、社会保障の制度設計がそうなっているからだという。
社会保障に投入する予算を極限まで削った結果、現役時代にまともに働き、納税して、年金保険料を納め続ける人生を送ったとしても、介護が必要な状態になったり、大きな病気に罹患したり、自然に老いを重ねたりすれば、いきなり国家から見捨てられてしまうのだから、恐ろしい。
今や、安心して老いることができるのは、超富裕層に属する人々に限られる。
貧困層ではないと自己認識している一般民とて、「何かあればアウト」だと自覚しつつある。
国家が当てにならない以上、自分で「何か」に備えるしかなく、乏しい蓄えを虎の子のように死守するしかない。
品性下劣な政治家が「あの世まで持っていけないんだから老人はもっと金を使え」と放言したが、この男には世の中がどうなっているか、まったくわかっていない。
彼ら(というか彼らの後ろにいるブレーンたち)は、「国民とゴマの油は絞れば絞るほど出る」と本気で信じている。
消費を増やす上でもっとも合理的なやり方は、安心できる社会を設計することによって消費しやすいマインドを作り出すことである。
それほど簡単なことがわからないはずはないから、本当のところ彼らは、経済成長も財政再建もどうでもよくて、目の前にあるあぶく銭をかき集めることに手一杯なんだろう。
現在のこの国のもっとも重要な課題がこの本には示されている。
時間を浪費すべきではない。
まして、状況をさらに悪化させるべきではない。