『どアホミクスの正体』の続編。
金融政策と財政が相互に独立し牽制し合う関係にあることは、社会科の教科書に載っている常識だが、ここ数年、それらはほぼ一体のものとして機能してきた。
この状況に理論的根拠を提供してきたのがシムズ理論だったことが、浜氏の冒頭発言で語られている。
シムズ理論とは、金融政策によってちょっとしたハイパーインフレを起こせば、物価と賃金を上昇させることができ、放漫財政によるツケも併せて解消できるという学説である。
ハイパーインフレは貯蓄を無化するから、財産を老人から剥ぎ取って現役世代へ移し替えることも可能となる。
このようなインフレから貨幣の価値を守るのが中央銀行の役割なのだが、本来あるべきでない姿ながら、政府が中央銀行の人事を支配すれば金融を意のままに動かすことができる。
一般の貯蓄は無化されるが、株価はインフレに連動するから大株主の財産は保護される。
賃金が物価上昇以上に上がれば現役世代が困窮することもないが、そうでなければ老人同様に犠牲にされる可能性は高い。
政府と大株主にとって美味しい話だが、一般の国民にどのような影響があるかは、なんとも言えない。
大株主が多国籍のファンドだったりする可能性は大きいから、それだとカネは現役世代の賃金上昇に使われるのではなく、海外へ流れることになる。
こちらの筋書きがもっともありそうな展開だ。