『僕の村の宝物』や映画『水になった村』にも登場する廣瀬ゆきえさんの一代記である。
著者の本はもっと読んでるのだが、この読書ノートには『僕の村の宝物』しか、収録していない。理由は不明。
著者は写真家なのだが、伝記作者ほど徹底した取材をされている。
本人の語りが45時間ぶん。それに加えてゆきえさんが暮らした場所と関係者を訪ねて岐阜から北海道まで何度も足を運ばれている。
まずはそれに驚いた。
強く共感する言葉があちこちに出てくる。
春から冬まで、必ずしなければならない仕事をこなすということ。
その季節にしか出てこない食べ物を食べること。
一日中・一年中、食べ物を得るために莫大な時間を費やすこと。
これらは、列島のどこで暮らしていようが、えらく当然のことである。
こんな暮らしをいくらかトレースしている。
それはグローバル化の対極の暮らしだが、素性の知れぬ食べ物を何も考えずに食ったり、意味もわからずにイノベーションとやらを語るのみならず、生き物としての人の暮らしをバカにするような言説が跋扈しているなか、とりあえず正道を歩いているつもりでいる。
内容とは無関係なことだが、校正ミスがたくさんありすぎると、美味しい料理に枯れ葉が混じっていたような感覚になる。