近い将来に予想される人口急減社会のシミュレーション。
急激な人口減少が起きることについては、かなり以前から指摘されていたので、そのこと自体は驚くに値しない。
本書は、当然起きるであろう自体を事実に基づいて述べているのだが、今ひとつ、「衝撃」的でもなかった。
人口急減がなぜ起きているのかとか、根本的な対策は何かとか、そもそも人口急減がマズイことなのかどうかという問題については、何も語られていない。
それらはテーマとして、報道が追究するには、あまりにも大きすぎるからだろう。
しかし、公共サービスが機能しなくなるとか、公共サービスが住民に転嫁されるというような「将来像」を示してみせられても、こちらとしては、どのようなリアクションをすればよいのか、当惑するしかない。
高度成長以来、農山村における人口の社会減は、国家の政策だった。
それでも残った人々が暮らす上で道路補修や水道の維持にコストがかかるのは、問題なのか。
政策としてどこまで適切だったかどうかは別として、田中角栄氏は、すべての地域で人々が人間らしく暮らせる社会を築こうとした。
財政の目的の一つが資源配分の適正化にあることについては、高校の教科書にも明記されている。
取材チームは、迫りくる破局の実態を予測するのに精一杯だったのだろうか。
田中氏がめざした社会を実現しようといえば、今や「サヨク」と言われるだろう。
それでも、都会だろうが農山村だろうが、同じように仕事ができ、子育てができる社会をめざすべきだ。
そのために必要な財政上の投資は、必要である。
人口が減少するのは、避け得ないだろう。
それでも、人間らしく暮らせる社会をどう作るかが問題なのだ。
掘り方を少々間違えた本という印象を受けた。