武士(荘官・地頭)の荘園支配とは、具体的に何を支配していたのかを明らかにした書。
地頭といえば、阿弖河荘民の訴状を想起する。
ここで地頭は、年貢納入だけでなく、地頭の上洛や下向に際しての労役や逃散したものの畑への麦蒔きなどが要求している。
本書は、それら以外に、武具の制作、材木を始めとする林産品製造、市の支配、犬追物に使う犬の調達等々、武士たちがじつに多様な生業に介入していたことを明らかにしている。
特定の荘園と武士の関係を総合的に追える史料はないらしく、取り上げられているのが、全国各地の断片的な史料なので、ややわかりにくい。
秩父地方の荘園の領家関係はわかっていないが、荘官だったらしい武士の名前は出てくる。
多くは丹党・児玉党に属する武士で、中村氏がその盟主だったらしい。
残念なのは、それ以上わからないことである。
中村氏は御家人だったが、その他の武士たちは誰の支配を受けていたのだろうか。
また秩父の武士たちは、地域においてどのような支配を行ったのだろう。
それがわかれば、民衆の生業の実態もさらに明らかになるだろう。