「森友事件」の取材記録。
2020年5月現在、事件はまだ解決していないと思われるが、2018年12月刊行なので、事件に関する記述はそこまでである。
森友事件にかんするアウトラインは、ほぼ明らかになっている。
政権と府が、個人的に癒着した学校法人に対し、認可や校地のありえない値引きを行ったこと、それが露見したため、証拠となる公文書を隠滅・改ざんしたことに疑問を持つ人は、あまりいないと思われる。
非常に深刻なスキャンダルであるわけだが、政権が、官庁・検察などに圧力をかけて隠蔽を図ったのに対し、まともなマスコミ人と野党の追及によってこのような事件だったことが明るみに出たのだった。
著者は、NHKの記者として事件の取材にあたった。
取材するとはこのようなことだということが、よくわかる。
新聞記者の取材については『新聞記者』がとても面白く語っているが、当然ながら、新聞と放送とでは、仕事のあり方がずいぶん異なる。
事件の本質に著者が迫っていく過程もさりながら、記者として事実にどう迫っていくのかについて述べられたtipsが含蓄深い。
著者は取材相手との信頼関係がもっとも重要だと、何度も述べている。
じつにその通りだと思うし、基本的にそれはどのような仕事にも通じる基本である。
『新聞記者』もそうだったが、若い人にぜひ読んでほしい本である。