江戸時代の出羽の山里で山伏の生活ぶりを描いた小説。
モデルのような人物はおそらく存在してなくて、ストーリー自体はほぼフィクションなんだと思うが、里修験が村の中で果たしていた役割等については、ほぼ作品のとおりだと思われる。
主人公の里修験・大鷲坊は、生まれた村の薬師神社の別当としてやってくる。
薬師神社とは異な社名だが、2019年に湯殿山の参道で薬師神社の供養塔を見た記憶がある。
大鷲坊は、病人や狐憑きへの祈祷だけでなく、困りごとや嫁探しや失せ人探しなど、村内におけるありとあらゆる困りごとへの対応にあたる。
里修験とは、そのような存在だったのだろう。
江戸時代には、秩父地方にも村に一人や二人、修験がいた。
修験は医者や駐在さんではなく、山岳における修行により、法力を身につける。
出羽の羽黒修験同様、秩父にも法力を磨くことのできる山岳が至るところに存在したから、修験がその能力を発揮できたのだろう。