1947年に書かれた著名な近未来小説。
スターリン時代のソ連をモデルにしているように見えるが、アンチ社会主義の宣伝小説というより、国家による民衆管理が将来どうなるかを描こうとしている。
それにしても、著者の想像力の凄さに驚く。
主人公はホワイトカラーに属し、ビッグ・ブラザー党の下級官僚である。
オセアニア国を支配するのは党で、党は、実在しているかさえ定かでない最高指導者をいただいている。
秘密警察組織の描写は、スターリン支配のソ連やナチスドイツでは実際に存在したとはいえ、いま一つリアリティにかける気がする。
一方、非常にやりきれなく感じるほどリアルなのが、一切の歴史・記録を改ざんするという、主人公ウィンストンの仕事である。
今の「日本」にも、それに類する「仕事」に従事する人々が存在する。
『官邸ポリス』のモデルや、彼らの部下がそうである。
彼らの中には自分たちなりの使命感を持つものもいるだろうが、実働部隊の人々はおそらく、自分の保身や昇進などが動機なのだと思われる。
良心とか正義感というような心性と真逆の人格を育てる体制という点で、この国は1984年に向かって進んでいる。