平安時代から鎌倉時代にかけての、文化を中心とした通史。
教科書的にまとまっていてわかりやすい。
前近代史の社会の変化を理解するのは難しいので、人物を通して歴史を学ぶというのは理にかなっている。
要は、どのような人物をどのようにとりあげるかだろう。
この時代を象徴する人物として、埼玉県北部の子どもたちが学ぶことを前提とすれば、熊谷直実と畠山重忠がいる。
武士政権を成立させた中核部隊は、源頼朝のもとに結集した無数の在地武士たちだった。
彼らの心性がいかなるものだったのかを理解できれば、武士政権の本質がわかるはずである。
幕府成立後も重だった御家人だった重忠も典型的な人物だが、子どもたちにとって、弱小武士ではあるが、平家家物語でのエピソードにこと欠かない直実の方がよりわかりやすい。
本書に登場するのは多く、頂点的な人物たちであるが、政治史も大事だから、これらの人物を深く知ることにも、意味がある。
北条政子や源実朝も面白いが、本書に取り上げられている後白河院・後鳥羽院・中世初期の頂点的な僧たちについても、その時代性と個性を教材化してみたい。