太平洋戦争当時の日米の兵器の技術レベルや開発体制の問題について取材した書。
戦争の結果は、兵器の性能に依存することが多いのは当然である。
より優秀な兵器を持った側が勝利に近づくから、国家は、より優秀な兵器を開発するために叡智を組織し、資金を投入する。
それはそうなのだが、戦闘は、敵の戦闘能力を削ぐことだけでなく、戦闘員を殺傷することでもある。
戦争が科学技術の発達に資するという意見をしばしば目にするが、それが事実なら、科学技術の発達自体が無意味だろう。
太平洋戦争で、「日本」が保有資源の面だけでなく、技術面でもアメリカに負けていたのは事実だろうが、「こうすれば勝てていた」という発想も意味がない。
負けた原因を探ることに意味を見いだせない。
負けたことによって、助かった命がある。
負けたことによって、「日本人」は多くを学んだ。
もちろんその逆もあるのだが、勝つことによって失うものは多く、負けることによって得るものはとても大きい。