BC級戦犯として処刑された学生・木村久夫の生涯を描いた本。
史料より聞き書きの部分が多いので、読後感がやや軽いのは否めない。
史料的にしっかり記述されているのは『真実の「わだつみ」』だと思う。
木村の生い立ちや生育環境などについては、こちらの本のほうが詳しい。
『陸軍特攻振武寮』に出てくる参謀・倉澤清忠少佐は、勉強すると余計な知恵がついてしまって、素直に死んでくれなかったと述べていた。
学生だった木村は、軍事教練も好まなかったし、戦争の見通しについても否定的だった。
彼が処刑に値する行為をなしたわけでなかったことは、「遺書」により明らかだが、カーニコバル島住民に指一本触れなかったわけではない。
軍に対し本能的に反発する心底を持ち、存命であれば有数の経済学者になっただろう木村にして、帝国陸軍の一員として住民虐殺の一端を担わねばならなかった軍というものの闇は深い。