十五年戦争の時代、日本軍によって占領された地域において通貨として流通させられた軍票や儲備券発行がどのような役割を果たしたかについてまとめた書。
日清・日露戦争の時代の軍票は償還されたようだが、十五年戦争の時代のものについて「日本」政府は全て放り投げたまま撤収した。
当該政府との間で戦時賠償についての話がついているのだから、もはや責任はないと言い逃れる向きもあるかもしれないが、偽金を掴ませた者が被害者本人に謝罪も補償もしなくてよいはずはなく、「日本」は無責任国家だと言われても仕方がない。
軍に必要な物資を購入するとともに、占領地の流通を支配することが軍票発行の目的だったと思われるが、戦局の悪化によって償還どころか、軍票はほぼ野放図に発券され、各地でハイパーインフレが発生し、民衆生活に混乱と破綻をきたした。
作戦が場当たり的で補給もままならなかったくらいだから、「日本」軍・政府は、軍票の大量発行によって発生する事態にどう対処するかという見通しなど、持っていなかったのだろう。
歴史教科書には軍票の「ぐ」の字も記されておらず、果たしてこのようなことでよいのか、考えさせられる。