2012年に自由民主党が発表した憲法改正案の読み方についての、憲法学者の対談。
この本の主たるテーマは「立憲主義」である。
国家のない世界は、現状では実現困難だから、憲法によって個人が個人であることを保障するしかない。
本書で対談者の言わんとするところは、憲法を至高の原理として機能させる考え方が立憲主義であり、民主主義の熟度は、立憲主義がどれほど理解されているかを尺度とするということだろう。
民主主義がポピュリズムによって暴走しうることは、ワイマール憲法の崩壊にまで遡らなくても、近年の大阪の事態を見れば明らかである。
かつての西ドイツは、「自由の敵に自由を認めない」と法制化して、共産主義を否定した。
それは、民主主義という形式を否定する論理である。
対談者たちはポピュリズムによる反憲法・独裁は許され難いと考えておられるようだ。
それはそうだがやはり、ポピュリズムもヘイト的言論もある程度までは、許されるべきだと考える。
ポピュリズムは民主主義の成熟によって克服されるべきである。
本書の読み方として間違っているかもしれないが、立憲主義の深みについて、考えさせられる部分が大きい。
近代は、人類の思想史に立憲主義という到達点を刻んだ。
しかしそこは思想史の終着点ではない。
個人が個人であり続けるための思想的試行錯誤はまだ、続いている。