太平洋戦争当時の物資補給ライン(生産地から日本へ 日本から戦場へ)及び軍需物資の輸送の実態について、史料と聞き書き両方から迫った調査報告。
「日本」が戦争に追い込まれたのは経済制裁によって資源の輸入に支障をきたしたからだった。
ところが、戦争の遂行にこそ、石油・鉄・ボーキサイトなど、各種資源が必要なのだった。
開戦前の日米の生産力に、如何ともしがたい差があったことは、「日本」の軍部にもある程度理解されていた。
ところが、戦争の行方に対する見通しがドイツの勢いに依存していたのもさりながら、海上輸送ラインが機能しなければ、作戦自体が成り立たず、戦争どころか国民生活さえ破綻することは、少し考えてみればわかったはずだった。
にもかかわらず帝国陸海軍は、制空権・制海権を失い、挽回不可能になるまで、輸送を軽視し続けた。
作戦面で言えば、輸送船に対し海・空の徹底的な護衛を伴わせて安全をはかるべきだったのに、それを怠った。
潜水艦を使ってアメリカの輸送船を徹底的に攻撃すれば、アメリカの攻撃力を大きく削ぐことができたのに、それをしなかった。など。
「こうやれば勝てたのに・・・」と言いたいのではない。
そもそも大本営指導部に、戦争を組み立てる力がないにもかかわらず戦争に突入して、あたら生命を散らせたのがこの戦争だったと言わざるをえないのである。
ワシントン軍縮会議の時の加藤友三郎全権の、「アメリカとの戦争を避けるのが最も賢明である」という言葉がが結局、最も至当だったのである。