竹橋事件に関する小説風ノンフィクション。
古い本だが、竹橋事件について、もっとも詳しいのは本書だと思う。
しかし、この事件については、史料が少なく、その全体像はほとんどわからないというのが実情である。
明治10年代前半まで、「日本」はまだ、転形途上にあった。
この時代を認識する上でもっとも重要なポイントは、そこだと思う。
地租改正反対一揆は、実力で地租を6分の5に下げさせた。
西南戦争は、政府打倒のための内乱だった。
世の中を変えることは可能だし、変革の力は衆力に他ならないという発想が、民衆の中に存在した。
明治11年の近衛師団を、天皇直属の精鋭部隊という後のイメージで捉えてはいけない。
下士官・兵は待遇に不満を持ち、一部の将校は革命を志向していた。
わかっているのは、そこまでだ。
下士官・兵と将校の思想的立場の相違や、蜂起後の権力計画などは今のところ、何もわからない。
ひょっとすると、ほとんど何もなかったのかもしれない。
新史料が望まれるが、ちょっと無理のような気がする。