昭和期の帝国陸海軍の抱えていた問題点について、専門家が議論している。
こう言ってはまずいかもしれないが、趣味を同じくする人々が傾けるウンチクといった感じで、面白い。
日米戦争はもちろん、やらないに越したことはなかったが、戦争指導や戦略や人事に、問題が山積していたのも事実である。
この本は、それらの点をきちんと指摘している。
戦略・戦術・動員・物資・戦費・人事等のリソースが適切に組織されなければ、戦争は戦えない。
リソースを完璧に組織するなど不可能なのだが、それをうまくやるかやらないかで、結果も犠牲のあり方も大きく変わってくる。
帝国陸海軍におけるリソースの組織化は、かなり下手な部類だったようだ。
戦史書の中には、もうちょっとうまくやれば勝てたかも的な記述も見られる。
それらはすべて結果論であり、開戦当初を除けば連戦連敗は必然だったはずだ。
どうせ負ける戦争だったと言いたいのではない。
リソース組織化の下手さ加減の中に、帝国陸海軍というか、近代日本の致命的な問題点があるのではないかということである。
士官学校などでの成績や、年功序列による軍内の昇進ルールがそうだし、適性を無視した作戦指揮や失敗の原因をきちんと総括せず、従って失敗の責任を曖昧にする体質などもそうだ。
不祥事はまず隠蔽するのもそう。
戦後、開戦責任も結局、曖昧にされた。
この体質は、戦後政治にも継承されているらしいが、どうにもやりきれない話だ。