著者のアメリカルポの第3弾。
主として第二次オバマ政権以降のアメリカの貧困の実態とその原因をえぐっている。
とりあげられている切り口は、農業、食品産業、種苗と農薬産業、公務員、マスコミである。
アメリカは一般に、農業大国だと思われている。
アメリカの農業者は、巨大な農業機械や飛行機を使って、広大な畑を耕作し、安い人件費で安い農産物を生産してリッチに暮らしていると、多くの人が思っている。
じつは虚像なのだが、それは、広大で緩傾斜な国土を持つアメリカ農業の、ごく自然な姿だろう。
ところが現実は、全く異なっている。
アメリカ農業を支配しているのは巨大アグリビジネスであり、農業の現場で働いているのは、借金に縛られて農奴のように働かされている契約農家である。
食品産業や種苗=農薬産業なども構造は同じだが、巨大アグリビジネスは、キーとなる政治家(大統領や国会実力者)を献金によってロボット化し、自社に都合のよい法律や制度を作らせる。
いかに道理の通らない法律であっても、法律は法律である。
理の通らない行為が合法とされ、まっとうな生き方が不法とされる。
「チェンジ」と叫んだ政治家が、当選したのちチェンジさせないために策動する。
巨大ビジネスの支配者は、各種ファンドの所有者=株主である。
アメリカという化け物を操っているのは、この人々である。
彼らは人間であるか。
それはヒトコトでは言いがたい。
なぜなら、彼らの行動を規制する原理は、人間としてのそれでなく、自己増殖しようとする資本のそれだから。
世界を構成している単位は、現在のところ国家だが、彼らにとって国家など、存在しないに等しい。
彼らの自己増殖の阻害要因は、彼らのツールの一つであるアメリカ国家が武力・謀略を使って除去する。
「日本」はアメリカの従属国だが、まだ植民地には成り下がっていない。
この「国」には、アメリカの奴隷にならない憲法がある。
ごく弱々しくはあるが、「食」に関する自立性も、まだこちらの手の内にある。
もはや風前の灯と言えなくはないが、これらがあるとないとでは、決定的にちがう。
これらにとどめを刺そうと企てているのが、アメリカのエージェンシー=安倍晋三である。