著者による、大阪・京都紀行。
大阪についてはともかく、京都とはどういう都市かについて語るのは、たやすいことではない。
じじつ、京都に関する記述は本書の三分の一程度にすぎない。
著者も、この本で京都の本質を語ったとは思っておられないだろう。
著者は、京都が前衛都市であり、国際都市であると言われる。
前衛都市とは、その町が時代の最先端を先取りしているという意味だと思われる。
そのとおりかもしれないが、必ずしもそうとは限るまい。
京都や奈良を通すことなく、著者の別の本にある博多や琉球や渤海との窓口だった日本海沿いの町などの方に、新しい情報がダイレクトに流入していたこともあったはずだ。
大阪が宗教都市だったというのは、新鮮な切り口であると思うが、石山本願寺が徹底的に湮滅させられた後に大阪城をいただく商都として再構築された町だけに、宗教都市の面影を偲ぶのにも、やや無理があるように思う。
同じシリーズの他の紀行に比べて、やや主観が勝ちすぎているような印象を持った。