レースのさなかに荒天のため船を失い、仲間を失いながらも生還したヨットマンの手記。
記述は淡々としているが、そこで語られているのは壮絶な記録である。
遭難には原因があるはずなのだが、その点についてはあまり饒舌でない。
しかしこういう書物には、それがもっとも必要だとは思う。
水と食料が欠乏している上、救出への見通しがまったくないという絶望的な心理状態の中で、冷静かつ適切な言動を維持するのは困難なことだろうが、生死を分けるのは、そこだろう。
人には、命があるかぎり生きる義務がある。
この本からは、そこを読み取るべきだろう。