尾崎放哉の死にざまを描いた小説。
かつて読んだことがあるのだが、読書ノートを作っていなかったので、再読した。
小説は、放哉が終焉の地である小豆島に赴くところから始まる。
放哉は結局、死ぬために小豆島に行ったのである。
俳人でもある酒造家と住み込んだ塔頭の住職の慈悲によって住処だけを与えられた放哉の結核は明らかに進行し、本人もまた周囲も、彼の死が近いことを悟る。
しかし、死ぬまでは生きねばならない。
生きるためには、最低限の衣食を得なければならないのだが、放哉にはその手段もない。
孤独な彼は結局、知己に懇願して最低限の金を恵まれ、死ぬまでの毎日を送ることになる。
肉体は衰え、生きることの望みはほぼ絶たれていく中でも、コトバに対する彼の感覚は鈍るどころか、研ぎすまされていく。
芸術とは、そのようなものなのだろうか。
著者自身が結核で死線をさまよった経験があるだけに、病気の描写は壮絶である。