経済学者の目から、アジアとどう向き合うかを、断片的なケーススタディを通して語った書。
アジアの人々が、旅行以外のさまざまな形で「日本」を訪れる。
外国人の出入国管理の管理的な部分もそうだが、「日本」国籍を持たぬ人々に対する偏狭な扱いは改まっていない。
アジア人にとって、「日本」は居心地のよい場所ではなさそうだ。
「日本」のネット上には、「出て行け」「帰れ」などの排外主義的な言説があふれている。
それがそのまま「日本」人の平均的な心情を表わしているとはいえないにせよ、この「国」に蔓延する干からびたナショナリズムが自浄する気配は見られない。
著者は一方で、「脱欧入亜のすすめ」として、「貧しい」アジアの「豊かさ」に目を向けるよう、促しておられる。
そうした視点は、切実に必要である。
しかし現実のアジアは、市場経済に向かってまっしぐらに突進しつつあるのではないか。
「日本」もそうだが、アジアの伝統文化の中にこそ、多様性や持続性を至高の価値とした、良質の思想が存在するはずだ。
そのような思想へのパラダイム転換が、取り返しがつかなくなる前に、行われなければならないのだが、どうなるだろうか