「日本」の被差別部落(著者は「路地」と呼ぶ」)の探訪記。
同和対策特別措置法とその後継法が切れ、「日本」の部落問題は基本的に解消したとされても、差別は残っている。
「日本」に存在する差別はもちろん、部落差別だけではない。
差別はなくなっていなくても、部落差別について身構えずに語ることが不可能でなくなってきたのは事実なのだろう。
本書に出てくる路地の人々は、路地(部落)の生業や現実について、政治的な口調でなく、語っている。
著者が、政治的な話題を避けているのかもしれないが、路地(部落)にとって、政治の季節ではなくなったということなのかもしれない。
基本的人権が万人に保障されることは、たいへん重要である。
一方、「日本人」がみな同じ顔をした「国民」であるわけではない。
土地それぞれ、町それぞれ、社会的集団それぞれに、歴史的なアイデンティティがあり、それらは全て、誇るべきものなのではないか。
路地(部落)とて、そのアイデンティティを大切にすべきである。
そうした一環として、本書は貴重な仕事だと思う。