2000年代に入って、中国の社会・経済がどうなっているのかを紹介した本。
中国は、共産党独裁ではあるが今や完全な資本主義国だと理解していたのだが、どうもそうでもないらしい。
資本主義国にはごく当たり前の財産権や居住の自由が、中国では保障されていない。
古い社会主義国にあったような計画経済は廃止されており、現状は市場経済ではあるのだが、すべてを市場に任せるという形ではなく、経済の方向性についても、共産党が描いたビジョンに沿って経済政策や投資が行われる。
だから国家=党が演出する市場経済という感じらしい。
これだと、国家=党が無謬でない以上、どこかで問題が起きるのは避けられない。
社会主義中国の前途は多難である。
計画経済は理論的にも実践的にも破綻したいうことになるのかどうかが、試されている。
表面的には、「社会主義市場経済」は問題点をはらみつつも、どうにか回っている。
しかし、政治面で、共産党支配が終局を迎えるのは、時間の問題と思われる。
20世紀の社会主義モデルは、共産党による一党独裁を基本とした。
その統治は、共産党の無謬神話を前提としていた。
マルクスやレーニンが神格化され、その継承者とされたスターリンや毛沢東やもろもろの指導者たちも続々と神殿に祭りあげられた。
このような統治が行き着いたのは、官僚による支配や恐怖政治だった。
現在の中国を支配しているのは、党官僚である。
指導部は、汚職や腐敗を取り締まろうとしているが、統治システムが官僚に権力を与えているのだから、人民との矛盾は大きくなりはすれ、解消することはない。
より大胆な民主化・自由化を指向しない限り、この統治体制を維持するのは難しいだろう。