『ぼくの戦後 回想の秩父』の続編。
現在の秩父在住者との交流記も含まれるが、サブタイトルに「想い出の人々」とあるように、著者の秩父在住時にゆかりのあった人々の回想記が中心である。
前著・本書や、著者よりほんの少し後輩でおられる武甲外羅さんのお話を伺っていて驚くのは、子ども時代における対教師・対友人の人間関係の濃密さである。
ひと回りほど若輩の自分など、高校時代のクラスメートでさえあまり記憶がなく、まして小中学校時代の友人となると、まったくと言っていいほど、記憶に乏しい。
これはひとえに、この方々が過ごされた戦後(昭和20から30年代)という時代の、人と人とのつながりの濃密なありように由来するのではなかろうか。
私事にわたるが、昭和40年当時、京都市内の某特殊学級(現特別支援学校)に在籍したことがある。
ここでの人間関係は、一般の小学校より、はるかに濃密だった。
この時代の友人のことは、よきにつけ悪しきにつけ、かなり鮮明に覚えているから、やはり人とのつながり方の問題なのだろう。
在籍していた学校のサイトを開いてみても、ごく普通の特別支援学校であって、これといって特徴も感じられないし、今でも時おり夢に見る、かつての面影もない。
今や、子どもと教師との関係はずいぶん、マニュアル的になってしまった。
子どもと子どもの関係はずいぶん、競争的で、敵対的になってしまった。
かつての教師と子どもの関係や、子どもと子どもの関係を、取り戻せるような世の中にしていくべきではないか。
本年(2013年)3月、著者である竹本先生、武甲外羅さんはじめ本書に登場される方々と、「一期一会」のひとときを過ごさせていただいた。
その会こそ、著者が秩父で過ごされた時代の雰囲気だったのだと、実感する。