「金売り吉次」を描いた歴史小説。
小説だから、荒唐無稽と思われる部分も多々あるが、平泉政権と陸海を結ぶ商人ネットワークとの関係が描かれている。
吉次と名乗る商人が列島各地で活動しており、陸奥の国・金成の吉次が、その持つ黄金の力で各地の吉次を糾合して、吉次ネットワークを束ね、北は蝦夷ヶ島から、南は南宋の首都・臨安までを股にかけて活躍する。
このようなスーパー商人は存在しなかったと思うが、東南アジアから北東アジア全体を包含する物流ネットワークは存在したはずであり、地域権力に影響されまた影響を与えつつあっただろう。
義経がモンゴル皇帝になったとか、八幡太郎が琉球王になったなどという妄想に比べれば、歴地の実像にはるかに迫った作品である。