階級闘争史観は、基本的対立関係を基軸に据えて歴史・社会を見る。
実存主義的歴史観では、自分にとって時代とはなんだったのかを基軸に歴史・社会を切り取る。
例えば普天間基地が今、置かれている現状に、自分はどう関わろうとするのか、というふうに。
だが、それでは歴史の実像はつかめない、と著者は述べる。
歴史的・社会的に意味のある事件や人物だけが歴史を動かすわけではない。
むしろ、歴史的にはほぼ無価値ととみなされがちな暴力団の抗争や芸能人の栄枯盛衰の、ひとつひとつの細部の積み重ねが、歴史であり社会なのだと、著者は考えておられるように見える。
これらが歴史の滔々たる流れの中で些事に過ぎないように見えても、そこには、生命と人生をかけた人間の人生があるのであり、ひとりひとりの人生の巨大な束が歴史なのだということなのだろう。
挑発的な表題のように本書は、戦後沖縄の裏面史というべき書である。
沖縄について語るなら、読んでおくべき本だと思う。
(下巻 ISBN978-4-08-746726-3 C0195 \743E 2010,8 集英社文庫 2013,8,13 読了)