再読書。
最初に読んだのは学生時代だったと思う。
あとがきに、著者の最初の本だと書いてある。
その後、町工場を舞台とするルポをたくさん書かれた著者の文体とはちょっと異質で、1960年前後の小説風の作品は、プロレタリア文学の系譜を思わせるものがあるし、ルポにも、労働条件や労働運動にかかわる記述が目を引く。
ものづくりは人間の仕事であり、人間の五感を駆使し知恵を絞って行われるものだという、著者の信念は、ここでもたびたび語られる。
しかし、町工場における仕事は、本書のタイトルに見えるように、職人らしい心意気や名人芸だけの世界ではない。
そこはあくまで、厳しい労働の現場であり、明るい見通しのない現実がある。
元請けによる工賃下げは、現場の労働者が、かぶるしかない。
やはりそうした現実を、きっちり見なければならない。
学生時代に、こうした本を読んだのは、たいへんよい心の肥やしになったはずだ。